ケン青木のファッションコラム21… そして.....バーブァー .....    
 

毎日のように大きな事件が起き続けている今日、既に古い話となりつつはありますが、この三月に米国証券業界第 5 位のベア スターンズ Bear Stearnsが J.P. Morgan Chase に吸収される見通しとなった旨、大きく報道されました。
サブプライム問題の痛手が大きいと言われ、本年の二月以降 資金繰りが急速に悪化、(つい10年程前の山一證券の一件を思い出してしまいますね … )一年前の同社は、一株 150 ドル程度で推移していたのですが、三月に入った途端一気に 30 ドルまで落ち込み、その週末“一株2ドルで J.P. モーガン チェイスに売却”という話となってしまったのでした。

米国の銀行、“ビッグスリー”の中では“通称”バンカメ( Bank of America) 、シティ( Citibank )の二行が共にサブプライム問題で体力が消耗していると言われていたこともあってか、 J.P. モーガン チェイスにその“お役”が廻ってきたということのようでした。

ベア スターンズの本社ビルは ,  南北はニューヨーク マンハッタンのマディソンアヴェニューの東側、 46 丁目と 47 丁目のブロック全体と、東西はマディソンからヴァンダービルトアヴェニューの間の一角の敷地全てを使って建てられており、近年 NY のミッドタウンに建てられたビルの中では一際目立つビルです。
  同社日本法人のウエッブサイトにこのビルの写真がドーンと出ています。
http://www.bearstearns.co.jp

写真中央、屋上がゴールドの八角形のビルがそれで、その右上がパンナムビル、いや現在はメットライフ (Metropolitan Life Insurance Co.) ビル、その地下にグランドセントラルステーション(ボストン方面などへの列車が出ている。またオイスターバー等も有名)となっているのです。さすがに最近は同社のビルに出入りする人、また残業と思われる窓の灯りの数等、随分と減ってしまったような気もします。
こうして何百、何千という人達が突然職を失ってしまったわけですが、ひとつ日本と異なると思われることは、一人一人が専門職として会社と契約していること。
つまり会社から自分が何を要求され、何をどれだけどうすればどれだけ稼げるのか、前もって決まっているのです。 従って個人の能力が認められ、会社に大きな利益を寄与してくれるという期待の持てる人は、早々にチェイスの方へ移り、同じ仕事を始めている という わけです。仕事探しで困っているのは一般の事務職の人達でしょうか。

そしてこれも日本と は 違い、誰がどのような仕事をしているのか、着ている服を見れば一目瞭然なのが 欧米 社会なのです。
例えば NYで オフィス 内 で郵便物を仕分けたり、社内へのドキュメントの配布等といったルーティーン ワークをしているのは、ほとんどが黒人ですが、彼らは揃ってダブダブのボタンダウンシャツに腰まで下げた、これもダブダブのチノパンツ、それにネクタイをしたりしていなかったりといった日本で言う“ビジネスカジュアル”に近い感じです。アメリカの企業のトップから見れば日本の会社のビジネスカジュアルは一体誰が上の立場にいるのか、責任者が誰なのか皆目わからず面食らうことでしょう。それとも逆に“なんと日本は民主的な国なのか!?”と驚かれるかもしれません。

そもそも日本の企業社会には、役職に応じた服 飾 のスタイルというものがありそうでないですし、部長より新入社員の方がいいスーツを着ているなどといったことが日常茶飯事なわけです。一般の人達については、流行(はやり)の服の形については、まあ敏感とも言えますが、欧米の知的上流階級の人達のように、本質的な服の良し悪しを見抜いたり、階級的な服飾様式を認知したりする眼力があるとも言えません。(えてして若い人達は人気の 雑誌を見て、せいぜい創られた流行の格好を真似るくらいが関の山、そしてその格好が“大衆レベル” 、 つま り多 数派において“流行(はやり)”だと認識さえされれば、個人の洋服に対する 本質的な 知識 の確かさや有無、 着こなしのレベルとは 一切 関係なくオフィスでは“お洒落な人”だと認知してもらえるのですから、これほど楽なことはありません。
欧米の企業においては、社内でのポジションが上に成れば成る程、品質の高い、良い服を着なければなりません。 そのことが下位の社員に対してのひとつの“示し”となり、且つ又昇進への動機づけとなるという考え 方 なのです。(例えばこの会社で部長になれば、これくらいのレベルの服や時計などが身に付けられる、という。)そして部の責任者、役員ともなれば、会社を代表する立場の一人として下手な格好をすることは対外的にもマイナスイメージにしかならないので、これは許されることではないのです。それ故私達のようなコンサルティングビジネスが成り立つ由でもあるのですが …..
早晩 日本もこのような社会と成っていくのかもしれません …..
また、日本の 9 割近くを占めてきた農村型共同体社会的体質を持った人達が今後とも社会の主流派であり続けるようであれば、そうなることをなんとか阻もうとして、そうでない、つまりあまり変らないままということになるのかもしれません ….

閑話休題。

. さてベア スターンズ社の本社ビルは、要するにグランドセントラルステーションから徒歩一分 という 近距離にあるわけですが、マディソンアヴェニューに面したビルの一階には英国テイストのシャツ屋をはじめ、ビルの周囲近辺には日本でも名の知られたクラシックテイストの洋服屋が軒を連ねており、グランドセントラル駅から同社ビル周辺の朝夕はちょっとしたNYのビジネスマンの“ファッションウォッチング”スポットともなっているのです。そしてまたグランドセントラル駅周辺、特にその西側には、ほとんどのアイビーリーグスクール( 8 校からなる米国東部私立名門大学のアメリカンフットボールのリーグにその名の由来ありと言われているが、実は英語のI nter V ersit Yの略という説もあり。

現在に至るも、ハーバード、プリンストンなど米国の知性を代表する学校が多い。)のクラブ(宿泊可)もあり、またニューヨークヨットクラブ等をはじめとする名門の紳士クラブもある( gentlemen's club と英語では言うものの、いわゆる“米語”では gentlemen's club とは少々?別の意味となります ….. が、)せいか、この界隈はニューヨークでも指折りの英国風 Well Dressed な装いの、知的な“大人の男性“がとても多いエリアなのです。

前回に、ピーコートは下層階級、ダッフルは中流から上流のアウターウエア等と書きました。日本的な文化の中でこれらを解釈されてきた皆さんはムッとされた方もおられると思いますが、今回はそれなら、アッパークラス、上流の人達はアウターウエアで何を好んで着るのかということで、 Barbour 社のワックスド コットンのジャケットをご紹介しておきましょう。

取り合えず、このジャケットさえ着ればあなたも上流の仲間入りが出来る(!?)のです。Global Warming などと言われながらも、今年の NY の春は朝晩まだまだ肌寒く、ついつい“暖房入れよっか?”、“コートを着てこっか”等と思ってしまう朝もまだまだあります。
そんな朝、何気にスーツやジャケットの上に引っ掛けて出かけるのにもとても便利なのが、Barbour バーヴァー社の、所謂“ワックスド コットン”若しくは“オイルド コットン”製のジャケットなのです。
ベア スターンズ社のビルの周辺には、このワックスドコットンの“バーヴァー”を着込むというより、パーッと羽織った人がとにかく多い。大げさではなく、ワンブロック歩く間に4 , 5 人の“バーヴァー”族にすれ違うこと さえ あるくらいです。

Barbour については、以前トレンチコートについて書いた際に、少し触れたことがありましたが、会社の創業は一応 1894 年ということになっています。“一応“としたのは、どうもはっきり正確な年次は判明していないようなのです。創業者は、 John Barbour で、以降ずっと一族で地道な経営をしてきました。

産業革命以降、 19 世紀以降の英国近代史の中では、アクアスキュータム社の防水加工されたウール、マッキントッシュ社のゴム引きコットン、バーバリー社の防水コットンギャバジン、そしてバーヴァー社のワックスドコットンと大きく分けて 4 種の防水素材が開発されました。この 4 種の中でなぜかもっとも軍用に使われることがなかったのが、このバーヴァー社のワックスドコットンでした。
うまく表現出来ないのですが、なんともアカデミックな雰囲気を持ったジャケットなのです。おそらく、その“雰囲気”が軍用にさほど用いられなかった理由なのでは、と勝手に思っているのです。

“バーヴァー”、その色調はほとんどがオリーブグリーン系です。 英国においては、アウトドアにて着用される服の色は、春夏物はグリーン系、秋冬物はブラウン系が多いのですが、これは当然“自然の色調”とマッチさせようということなのですが、オリーブグリーン色のものについては比較的一年を通じて着用される色合いなのです。
バーヴァーのジャケットは、素材が 特殊なワックス・オイルを染み込ませ た 、目の詰まった丈夫なコットン素材で、素材の中には“ thorn proof ”と呼ばれる、トゲなどが刺さりにくい、引っかかりにくく加工されたコットン素材もあり、それらがまた wind proof 効果を も もたらし、冬場でも軽さのわりに結構暖かく感じるのです。また、ワックスのせいで生地の表面にはやや光沢があります。とにかくこれさえ着ていれば、 雨だろうが雪だろうが、 どんな天候にも対応可能ですし、なんと言ってもこれを身に着けていれば、どこでも“まっとう”な“一人の教養ある紳士”に見てもらえる確立が非常に高い 代物 であるのです。
随分 と 昔 (20 年以上前のもの ) ですが、当時私が購入をした物は、しばらくの間生地の表面に油分がガンガン染み出てきてベトベト、さらには特有のワックスの匂いなどもして、東京都内でそれを着用して電車に乗るという雰囲気のものではありませんでした。
  あくまで“カントリーサイド限定”という感じ。

このバーヴァー社のジャケットは 、 元来フライフィッシングやハンティングなど、最近ではバードウォッチングなどにも“最適”とされていますが、近年、より軽量で、ほとんどオイルのべトつきのない、匂いもほとんど感じない新しい加工の製品が出てきてからは、それまで以上に NY やロンドン、パリなど、東京を除いた世界のあらゆる大都会にて、あらゆる状況下にて着られているのです。しつこいですが、とにかくこれさえ着ていれば、急に雨 や雪 に降られようと、高級レストランでのディナーの誘いが 入ろう と、全くあわてる必要がないのです。 

 例えばディナージャケット ( タキシード ) を着て、その上にバーヴァーを羽織り、レンジローバーを運転してパーティー会場に登場、等ということは数限りない男性が行ってきておりますし、スーパーブリッツ( Brits )なタイトフィットのスーツにロンドン特有のド派手なストライプシャツとジャカードタイの組み合わせ、カフリンクスにスイスジュラ渓谷製のビッグなフェイスのリストウォッチに、ジョン ロブあたりのレースアップシューズ、そしてここだけは NY 風でセルフレームのウエリントンタイプの眼鏡。こんな格好にもやはりバーヴァーを軽〜く羽織ってしまう。またツイードやコーデュロイのジャケットにヴィエラのタッターソールシャツにブルージーンズ ( 何言ってるのかわかりませんか? ) 、 モカシンシューズを合わせ、やはりツイードのフェアウエイキャップ(日本で言うハンチング)をかぶると言った“郊外型スタイル”にも当然ながらバーヴァーを合わせてしまうといったように、“とにかく”しつこいですが、“とにかく”何にでも、どんなコーディネートでもこの“バーヴァー”を合わせて さえ しまえば、どこへ行っても変な顔をされることはまずない、と言っていいくらいなのです。

このジャケットには、外側下部両サイドの大きなフラップ付きポケットやハンドウォーマーをはじめ、全てが非常に機能的に出来ており、ほとんど手ぶらになることも出来そうなくらいです。フロントのメタル製の大きなジッパーは手袋をしたままジッパーの上げ下げも可能です。
ここまでバーヴァーが 天下御免、 有名になった理由のひとつは、 20 世紀 半ば 以降、英国王室のメンバーに愛用されてきたことが大きな理由だと言えます。実際 現在でもエリザベス女王、夫君のエジンバラ公、そして長男チャールズ皇太子の三人の御用達許可状という栄誉の他、ほとんどの王族に所有され、かつ愛用されていると言っても過言ではないのです。

チャ―ルス皇太子が、ポロの試合にランドローバーを駆って、バーヴァーを羽織って登場してくるのは有名ですし、アン王女がガーデニングの際にバーヴァーを愛用していることも、これまた有名です。バーヴァーのジャケットにはいくつか代表的な 、 定番とも言えるスタイルがありますが、丈はフィンガーチップレングスと言われる、指をいっぱいに伸ばした長さ、若しくはスリークォーターレングスと呼ばれる、ほぼ膝上の長さのものが多いですし、また使いやすいのでないかと思います。
昔は生地の重さによって 3 種類に分かれてましたが、最近のもの( といっても アメリカにはヘビーウエイトのものはあまり輸入されていないのかもしれませんが ….. )ほとんどが昔ならばライトウエイト、と言ってよい程度の重量のものしか見かけなくなりましたが、街中で着るにはむしろ好都合のように思います。私が最初に購入をしたのは先述したように 20 年以上前でしたが、ヘビーウエイトのもので、今でも勿論現役で 一年を通して 重宝しています。
実はこのジャケットの面白いところは、“ワックスド コットン“という特殊な生地のせいもあるのですが、洗濯やクリーニングをほとんどしないのです ( 勿論その気になれば出来ないことはないのですが。) 従って 着用の年数が長くなれば長くなるほど 油の部分に汚れがついて、黒ずんだり、また袖口等が永年の着用によって擦り切れてきたりするのですが、それがまた別格で“良い” とされている のです。

なんと、 汚れで黒ずんで擦り切れが たくさん あればあるほど価値も高まり、よりいばって歩けるという 、何とも不思議な服なのです。
昨秋 来NYにおいて、 二人の 、かなり 年配の方に道を歩いていて私はバーヴァーの袖を?まれ、“そのバーヴァー、わしに売ってくれんかの ... ”と頼まれました。 “ 売ってくれ ” というわりには、オファーの金額が少なかったので、どちらにも YES とは言いませんでしたが、要するに、“自分の年齢ではここまで風合いを AGING する時間的余裕がない。“ ということのようでした。おそらく 今私が書いたようなことは多くの日本の方は理解出来ないと思います。以前、バーヴァーを着て、妻の実家へおじゃました際、義母から“ちょっとケンさん、ホイト( こじきのこと? ) のごた …. ”と長いため息をつかれました。
でも、 NY においても 、そしてロンドン においても 、こ のバーヴァーを 着ていたお陰で、レストランでも思いの他良い席に案内してもらえたり等等、幸運だったことがいくつもあるのです。さっき書き忘れましたが、レインコートも基本的にはクリーニングにはほとんど出さないものなのです。昔、刑事コロンボ(そのうちコロンボとコジャックについてしっかり書きます。)のレインコートをボロ服の代名詞のように言う風潮が日本のアパレル業界にありましたが、本当は決してそんなことはなくて、あのレインコートは相当な“くせもの“なのです。決して安物のレインコートでなく、本人曰く、NYの 57 丁目で相当吟味をして購入したものなのです。
当時のアメリカ人の目から見て、何がおかしかったのかと言えば、“ほとんど雨が降らない、しかも温暖なロスアンジェルスにて年がら年中レインコートを着ていることと、NY“なまり“丸出しのコンビネーション”の面白さにその源があったのでした。

さてさて、日本においては“OL“受けの良さについてはほとんど期待出来ないと思いますが,普段から欧米との繋がりが深い方、ぜひ一着バーヴァーの購入を検討されてみては如何でしょう。そしてその際は、最近の商品に付いている、つまりコーデュロイの襟に付いている安物風なゴールドのプラスチック製の Barbour バーヴァーのバッジをぜひはずしてから着用してください。 Gent紳士は、やたらと周囲に出所のわかるものは着用しないのです。ドカジャンみたい、などと言われてもめげずにがんばっていただきたいと思います。

 それではまた。

 

“ワックスド コットン参考サイト

http://www.bestgear.com/

http://www.barbour.com


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