この生きにくい世の中を作ったのが人間なら、それを乗り越えるすべをほかに求めても無理というもの。
医師・医学博士にして、二代目養蜂家でナチュラリスト、さらに、かって世界でもっとも過酷なレースといわれた「キャメル・トロフィー」で日本人最高位の準優勝を果たしたこともある宇津田 含が、フィジカル、メンタルな面から、サラリーマンに生き残りの処方箋を書いてくれる。
(おことわり:宇津田 含は、ひとこと多い医者であるため、結構生き方下手である。この処方箋は、健全な身体と心は育ててくれるが、上手な処世術の手助けにはならないかもしれない。服用時には効用の再確認を!)
※筆者への質問や感想のメールをどんどんお寄せください
 ■Vol.4 夏・アウトドアの諸注意

  ■暑い夏。快適なはずの都市生活を送っていても、場合によっては都市もジャングルになり、そこでの生活もアウトドアライフになる。子供たちの夏休みにつき合おうものなら、余計にそうである。
今回は、夏のアウトドアライフを特に不快にする昆虫と紫外線への対処法について考察する。

  ●ハチの毒は複合蛋白質。アンモニアをつけても何の効き目もない。  
 夏を不快にさせる要因は色々あるが、最右翼は何といっても病害昆虫だろう。
ハブやマムシやヤマカガシ(十数年前に有毒であることが確認された)などの毒蛇であっても、人間側が注意さえしていれば噛まれることは少ないが、ハチやアブやカなどの昆虫はそうはいかない。前触れもなく不意に襲ってくるからたまらない。
ハチには歩行中でも刺されることがある。カやハエやダニの存在は、誰でも容易に想像がつき、蚊取り線香や痒み止めや防虫ネットなど、準備万端怠りないからいいだろう。ところが病害昆虫のうちでも、放っておくと病院に駆けこまなければならなくなるような場合があるのがハチだ。

●要注意はハチ! 一刺しで、ショック死も…。

恐ろしい病害動物の存在しそうにないこの日本でも、毒性が強いがためのショックやアレルギーの呼吸困難での死亡が、毎年二桁数は報告されている。
アレルギーというのは困ったもので、「去年まで平気だったから今年も絶対に大丈夫」ということはないから恐ろしい。ある年から突然花粉症が出始めたというのを聞いたこともあるはずだ。たかが虫と甘く見ては駄目、死ぬこともあるのだ。

 ところで読者の中にはハチに刺されたら、オシッコをかけると良い・・・と聞かされた者も相当数いるのではないだろうか。いままでアンモニアがハチ刺されに効くとされていたのは、ハチの毒が蟻酸であると信じられていたからなのだ。つまり酸性の蟻酸をアルカリ性のアンモニアで中和すれば良いと考えたわけだ。
ところが、実はハチの毒もヘビの毒も複合蛋白質。アンモニアをつけても何の効き目もないわけだ。アンモニアが含まれているからオシッコをかけるというのは残念ながら無駄なのだ。


●養蜂家の応急処置はタマネギ!!
 養蜂家である我が家で行っている最も有効な応急処置は、刺されたらすぐタマネギを患部にゴシゴシ擦りつけるというものである。
腫れや痛みや痒みが少しですむ。
これは実家のある地域の森林労働者も実践している方法。
タマネギはその菜汁が有効なので、どう切ったものでも良いが、繊維の走行に垂直になるように頭頂部を水平に切った丸のままのものが握りやすくて使いよい。

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皮膚の上からだから、刺入されたハチ毒の全量を完全に無毒化することはできないが、筆者の経験では、市販の抗ヒスタミン剤やステロイド剤などを塗るより、このほうがはるかに優れている。

効果の詳しいメカニズムは明確ではないが、タマネギに含まれる蛋白分解酵素が蜂毒の蛋白を分解するからだろうと考えている。
民間療法だからといって馬鹿にはできない。治ったが勝ちに決まっている。そもそも現代医療だってオリジナルやヒントは民間療法からのものが多い。
 但しあくまでも応急処置だから症状が進むようであれば、すぐ医者にかかること。 ミツバチの場合は皮膚に剣が残ることが多く、掴んで抜こうとすれば剣の根元の毒嚢から毒を再注入してしまうことがあるので、黒い剣の根元に小さなクリーム色の袋がついている場合はこの毒嚢を指で弾き飛ばす。


●刺されたら意識喪失!アナフィラキシイーショック。
医者に行くほどの時間も無く、急激に症状が悪化する場合がある。これはアナフィラキシ−ショックだ。

  筆者は医師でもあると同時に2代目養蜂家でもあるが、かって繁忙期を手伝ってくれていた60代の男性が10年振りに養蜂の手伝いに来てくれたものの、たった一匹のミツバチに手を刺され意識喪失、50代前半の身の丈六尺の頑健そうな男性も手伝いに来て3匹に刺されて入院、生家の庭先の一般道を散歩していた髪毛の長い30代後半の女性が頭部を2匹刺されて昏倒、と、この春からでも養蜂に絡むもので我が家は3件の事故を経験している。こんなことはかって無かったことだ。
 我が国に西洋ミツバチが持ち込まれたのは1968年と言われるから、日本人と西洋ミツバチのつきあいはそう長いものではなく、日本人にとって西洋ミツバチの蜂毒は西洋の人に比べれば抗原性が高いと思われる
。それに加えて、特に我が国では、生活環境・社会環境の急激な変化が続いており、これによって日本人の免疫システムに混乱が生じ、蜂毒による事故の確率が格段に増加しつつあるのではないだろうか、と疑っている。

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 ■死に至るアナフィラキシ−ショックの症状と緊急対応チェックリスト 


 近年、小児科領域でもアナフィラキシー・ショックは重要な課題になってきている。患者数の増加が認められ始めているからだ。「これまで原因不明とされてきた小児の突然死の半数はアナフィラキシー・ショックではないのか」と唱える小児科医も出始めている。筆者と同様に多くの小児科医が我が国の生活環境・社会環境の急激な変化を問題視している。
アナフィラキシー・ショックの詳しい発症機転については割愛するが、その病理学的本態は、血管透過性の亢進、抹消血管の拡張、粘液分泌の亢進、平滑筋の運動亢進、などで、その結果として候頭浮腫や気管支喘息による呼吸困難、低血圧による循環不全などが惹き起こされる。

●アナフィラキシー・ショックの具体的症状


1.皮膚には、蕁麻疹が発生することが多いのだが、食物アレルギーによるものに比べて痒みが薄いことが多い。抹消血管の拡張や血管透過性亢進のため、浮腫・紅潮が出現する。

2.消化器系には、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・血便、等が認められることもある。

3.呼吸器系には、咳・喘息・候頭浮腫・呼吸困難が出現する。

4.循環器系として、胸痛・動悸・不整脈などが出現する。 低血圧が生じると脈が弱くなったり触れなくなったり。普段から脈をとったり血圧を図っておくと早い段階で異常を把握できるだろう。

5.中枢神経系として、めまい・頭痛・血圧低下、そして意識消失・意識混濁・痙攣へと続く。
最悪の場合は、死亡。

これらの症状は単独で出ることもあれば、複合して出ることもある。
数十分から数時間の経過をたどることが殆どだが、速い場合は、発症後5分間で死に至ることもある。 以上は食物アレルギーによるアナフィラキシ−症状とほぼ同一だが、蜂に刺されて起こる場合は、上記の過剰な免疫反応による症状の他に、蜂に襲われた恐怖と疼痛による神経原性ショックによる症状(大血管の拡張や徐脈など)が加わり、事態は一層深刻
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●チェックリストと応急処置法はアウトドアでは必携。
 発症したら、専門医療施設へ搬送するなり、救急車を呼ぶなりしなければならないが、どちらにしても皆さんが応急処置をしなければならない。以下に試みるべき処置を挙げる。チェックリストにしてすぐ確認することができるようにしておこう。
滅多に経験することでもないから、起こってしまえば、皆さん、必ず動転されるだろう。チェックリストの内容を正確に思い出そうとしても先ず無理、前もって手順を憶えておく必要はない。うまく思い出せず順序を間違えることの方が、危険な場合もある。
私は、アマチュアパイロットですが、パイロットは墜落に際しても最後の最後までチェックリストで操作を確認しながら復行を試みるよう指導されいる。

無資格者にも行える応急処置法を以下に示す。

 応急処置法はこちらをみる>>>>

チェックリストには、気づいたことがあればどんどん書き加えて、または削除して、自分専用のオリジナル・チェックリストを作る
。例えば、救急車の電話番号。「救急車の電話番号なんか書いておく必要ないさ」って?非常時は思い出せないもの。「110番? 119番? 105番? アレ?」

●民族全体が新しい環境に適応する体づくりは千年を要する。
一旦なんらかのアレルギー体質になった人でも、まだなっていない人でも、伝統的な暮らしを護ることでアレルギーの発症はかなりの確率で抑え込む事ができる。
何らかの新しい環境にその民族全員が馴染めるようになるまでには、その民族全員が新しい環境に接して、最低でも1千年、一般的には2千年が必要とされている。
衣・食・住、身体に関わるもの全てを見直してみよう。
多くの日本人にとって、畜肉・乳製品・砂糖・精製塩・化学調味料・酒・タバコ・新建材・合成洗剤は第二次大戦後のもの。お隣の国、韓国にしても、焼肉・キムチは現在では日常的な食べ物かもしれないが、実際には近年のもの。摂るべきでない食物や食べ方についてはこれからも具体的に書いていくつもり。
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 ■お騒がせな昆虫対策、忘れてならない紫外線対策! 

 
●昆虫が耳の穴にはいったら
 夜になると、ライトやランプに向かって昆虫が乱舞し、中には耳の穴に迷入するものも出てくる。そうなると騒鳴と耳痛とで、とても平静ではいられない。
筆者は、ゴキブリの幼虫を2匹も耳の穴の中に飼っていた妙齢の御婦人を知っているが、その時の彼女は、発狂寸前だった。どうせ耳垢でもゴソゴソ鳴っているのだろうと思っていたが、覗いてびっくり耳の穴、こっちが身震いしてしまった。
耳に虫が入った場合、耳のそばにライターや懐中電灯の明りを近ずけ、その明りに向かって懐中電灯の明りに向かって反転してくるのを待つ、と言う古典的方法もあるが、ゴキブリの幼虫のように反転できないくらいのある程度の大きさのものが迷入し、また後退りもできないということであれば、いくら待っても出てくることはない。ぼやぼやしていて、鼓膜でも噛られたらたまらない。
小さい虫なら、吸い込まないように綿などをフィルターにしたストローで吸引することもできるが、大きい虫はエタノールを点耳(注入)し、殺してから除去する。
この代用は、バーボンやスコッチなど度数の高い蒸留酒が良く、ビールや日本酒など醸造酒は、界面活性作用が弱く効果が薄い。ただし過去に中耳炎などにかかって鼓膜に穴のあいている人は止めたほうが良い。

●目に虫がはいったら…
また、眼も昆虫にやられることが少なくない。これが眼に入れば疼痛と流涙が激しくなり、不快どころではない。
通常上瞼裏の外側に付着するから、眼瞼を反転させると発見されることが多い。
屋外では手も不潔になっているから、指で直接虫を掴もうとしないで、仰向けに寝、瞼をこれは指で反転させて水で流してやるのが良い。
麦茶やウーロン茶など飲料水の類でも充分代用可能。ただし、糖分の強いものやアルコール飲料は、刺激が強く不適当。
間違っても擦らないこと。角膜に傷がついて、一日中コロコロした感じが付きまとい、不快なことこのうえない。虫に限らず埃でも同じこと。


●サバイバルグッズに缶入りウーロン茶

 ちなみに筆者は、眼に限らず受傷部を洗ったりでき、冬には焚き火の傍らで温めて湯タンポ代わりにもなるから、必ず缶入ウーロン茶の類を携行している。

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●角膜保護にサングラス必携

さて次は紫外線。
長時間強い日光を浴びると、紫外線によって角膜の表層が破壊されびまん性表層角膜炎が生ずる。「まぶしい、涙が止まらない」と訴え、ひどい場合は視力障害を生じることになる。
例えば保護眼鏡なしで晴天下にスキーをしたあと、数時間後に発症する「雪眼(ゆきめ)」という激しい角膜障害はこの急性劇症型である。
一般的には日本人の瞳は黒から茶色でもともとサングラスをしているようなものだから、単に眩しさを防ぐためならサングラスの選びにそれほど神経質になる必要もないだろが、目的は紫外線カットなのであるから色が着いていれば良いというものではないのでご注意を。筆者はUVカットのレンズを使用した経験はないのだが、信頼できるメーカーがUVカットの効果が高いと保証するなら購入してみるのも悪くないだろう。
今後オゾン層の破壊は一層進むといわれており、地表に降り注ぐ紫外線量も増えるから考慮しなければならないグッズの一つかもしれない。

●肌は露出しない、露出箇所にはUVカット化粧品を
紫外線は角膜だけでなく皮膚にも辛いものだ。
白人に皮膚癌が多いという話を聞いたこともあると思うがこれは皮膚にサングラスをしていないからだ。
癌になるのはまあ遠い先の話だとしても、日焼けは痛みの他に体力の消耗をも招くためできるだけ肌は露出しない様にするのが望ましい。肌が露出した部分にはUVカットの化粧品の類を使用することをお勧めしたい。

●帽子と濡れタオルで熱射病予防
これは紫外線でなく主として赤外線によるものだが、炎天下では体温が上昇しいわゆる日射病を招きやすい。特に帽子の着用は忘れないこと。疲労を感じたら首・わき・股の付け根(膝の裏側・肘の内側)に濡れタオルを当てる。これらの部分は比較的浅いところに血管が走っているため血液を冷やすのには効率が良いからだ。

何のために夏休みがあるのかを考えれば、夏はホントは屋内でゴロゴロしているのが一番なのだろうが、そういうわけにも行かなければ、ちょっとした心掛けは忘れないように。


               (終)

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